コンポを買ってはいけない

コンポを買ってはいけない


2024年 05月 16日

世間は新型SRAM Redの価格に議論が起きていますが、個人的にはシマノの値上げといいい、アフターマーケット向けコンポーネントの価格についてなぜここまで盛り上がるのか不思議です。

今週、天気が良かったので急に思い立って190kmほど走ってきました。このバイクもそろそろ購入して2年になります。交換したパーツを思い返すと、ホイール以外は消耗品程度と言ってもいいでしょう。そうなのです。普通は完成車を一旦買うと、STIレバーやFD、RDなど高価な主要コンポーネントを交換することはまずありえないのです。

これは業界の悪習だと思いますが、ユーザーに対して最低でも105とか、コンポを少しでも高い方に載せ替えを誘導するやり方でここまできました。アルテグラからデュラエースにRDを交換しても、ほとんど変わりません。僕はブラインドテストして分からないと思います。最新の変速系はもはやそういうレベルにまで到達しているのです。そのコストで自転車旅に出る方がもっと自転車が好きになるし、ひいては生涯の顧客になるでしょう。とにかくハードウェアを買わせて目先の売上を立てるやり方というのは限界迎えていると思います。

もちろん競技をするライダーなら落車して壊すことはあると思いますが、電動化した今とはなっては新車から2年未満の通常使用で壊れることはまずありません。シマノが自信を持ってアルテグラを2年保証している所以でもあるし、これがDAとなれば3年になります。なので競技勢がDAを使うのは3年使い倒して壊れてもシマノが保証してくれるという安心感があるのも大きいと思います。3年以内に剥離しても保証されなかったクランクの話はここではしません。

シマノのパーツがこの所立て続けに値上げされているそうですが、例えばカセットが1,000円とか、チェーンが500円とか値上げされたとて、ストック用に何個も購入するようなものなのでしょうか?シマノはスティルスで製品を改良することがよくあり、多少高くなっていたとしても、最新のものを買うのが最良のはずです。オイルショック時のトイレットペーパーから、コロナ禍のマスクまで、買い占めというのは害悪であるというのは改めて強調したいと思います。

ではなぜここまでコンポの値上げが話題になるのか?それは日本のマーケットに根強く残る「フレーム販売」という形態に依存していると思います。自転車メーカーの営業部門で働いていて、耳にタコができるほど受ける質問No.1だと思いますが、「フレーム販売はありますか?」というのがあります。フレーム販売の需要があるということは、それだけコンポーネントの需要や、コンポを買い替えない場合でもフレームを載せ替えする需要があるのです。

新車を買わず、わざわざコンポのみを入れ替える理由は色々とありますが、日本のバイクショップの工賃が欧米よりかなり安いというのがあります。おそらく2〜3万円が相場でしょうか。アメリカにあるトレックショップの工賃を見ると、フレーム交換が$90/hとなっています。ものすごく手の速いメカニックが3時間で終えたとしても工賃だけで約4万円です。また、油圧の電動コンポの交換がこのお店で購入して$299=約45,000円です。

また、海外通販の黄金時代はフレームもシマノパーツも破格の価格で購入することができました。関税の無い自転車用品をイギリスから輸入するのが、世界で一番安くシマノパーツを買う方法でした。当時はシマノパーツがグレーマーケットにあふれており、なぜかイギリスやドイツから買う方が安いという謎現象が発生していたのです。これが自転車ブームを支えていた側面があり、弱虫ペダルのブームと相まって、多くのサイクリストが誕生しました。

しかし、良い時代は長く続きませんでした。最終的にはシマノが本腰を入れてグレーマーケットを撲滅し、海外通販の魅力が半減すると最終的にはオンラインリテイラー自体が死に絶えてしまいました。今ではシマノパーツを格安で購入する方法はほぼありません。

それが故に値上げに対してマーケットが敏感になっているのでしょうが、そもそもコンポーネントはアフターマーケット向けの化粧箱入りで買うような性質のものではありません。あまりにも高価でコスパが悪いからです。例えば希望小売価格が10万円のSTIレバーなら、完成車メーカーにはOEMプライスとして3万円や4万円で納入されています。これはシマノが完成車のモデルイヤーと台数に合わせてプレオーダーを受けて計画生産し、バルクで一括納入しているため可能な価格です。海外通販黄金期にはこのようなシマノ製品がアフターマーケットに流入していたと思われます。

よく、CANYONのRed組完成車の価格が、コンポとホイールだけの定価換算でフレーム/フォーク/コクピット/ピラーが無料になると言われていますが、これが理由です。SRAMコンポの国内外価格差が大きいためこのような現象が起きるのです。

近年ではフル内装化が進み、コンポはフレームに付属してくるキットの一部という位置づけになってきました。ますます交換するのが困難になっているのです。なので、今後フルセットのコンポーネントをアフターマーケットで購入するという需要は縮小していくと思われます。今回のRedの発売を見ると、あからさまにアフターマーケット向けは後回しにされていると感じませんか?つまりはそういうことです。

なので、新型Redを使いたいと思うなら、化粧箱に入った一式を購入するのはとんでもなくコスパが悪いので、完成車を買うのが最良です。このように考えを変えてしまうと、コンポ単体の値上げなんてどうでもよくなりますよね?結局はグロスの価格になるのでコンポの価格をいちいち計算するのは無意味です。そんなことをするとCANYON一択になってしまうので。今後、コンポの載せ替えというのはフレームに愛着を持つ人による優雅な嗜みになるでしょう。

ハンドメイドの小規模ブランドが作ったフレームを買った場合は?という難しい問題があります。例えばチタンのフレームセットを80万円でオーダーしてショップに持ち込み、新型RedにPMクランクを入れてハイエンドホイールで完成車に仕上げると200万円を簡単に超えます。ここまで高くなるのはホイールを含めたコンポ一式をアフターマーケットで購入する羽目になるからです。

なので、本来は小規模なフレームビルダーでもあってもシマノやSRAMのようなコンポーネントブランドから大手完成車メーカーと同じ価格でパーツを購買可能であるべきなのですが、どうやら国内では新進気鋭のフレームビルダーがシマノセールスと直接取り引きをするのはほぼ不可能、もし可能であっても信販会社が間に入るので、その限られた与信枠の中でしか取引ができないので、フレームビルダーは完成車という形態で納品して利益を最大化するのが困難で、結果的にハンドメイドバイシクルの文化が育ちにくくなっています。

擁護すると、シマノもSRAMもハンドメイドバイシクルの文化を応援しようと頑張っています。NAHBSに協賛したり、フレームビルダーとコラボレーションをして新型コンポのプロモーションをしたり、記憶に新しいのはGRX Limitedでしょうか。

これはLa Routeの原稿でも書きましたが、フレームビルダーはフレームを作る人ではありますが、究極にはバイクデザイナーであり、独立した1つのバイクブランドでもあります。なのでフレームを注文して、それを行きつけの自転車店に持ち込んで完成車にするのは面白みがありませんし、なによりフレームビルダーとしても利益が薄すぎます。なので、本当にそのフレームビルダーに惚れ込んだなら、自転車店を通してではなく、直接やりとりして、直接支払って、完成車にまで仕上げるのが醍醐味だと思います。

とにかくコンポはアフターマーケットで買う必要はありません。ほとんどの場合フレームビルダーなり、完成車メーカーが厳選した最良の組み合わせで納車されるからです。さぁ、これで値上がりが気にならなくなりましたね?

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1件のコメント

「買う必要はありません」は余計なお世話ですよ。単品だと完成車に初めから組んである場合より割高ですが本人が納得してるなら他人がとやかく言う必要はありません。

それはともかく、機械式リムブレーキの時と比べるとスラムのブラケットの形状はかなり変わりましたねえ。新型のレッドのはTTバイクのブレーキレバーみたい。

Hirosiosita

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