伝説のGrinduro Japan

伝説のGrinduro Japan

投稿日 2023/10/16

例えばUCIレースなら海外からコミッセールが来日し、安全性と格式の高いレース運営が担保されますし、ULTRAと名がつく音楽フェスならそれがマイアミでもソウルでもお台場でもある程度のラインナップと演出が期待できます。フランチャイズというのはそういうものです。

我々はその看板を信用し、安くはない参加費を払い、遠くからそのイベントやレースに参加します。もちろん、イベント主催側もそのブランドを持つフランチャイザーに対して安くはない公認費を払ってフランチャイジーになる訳です。

2015年9月、インターバイクで「Grinduroというイベントがアツいらしい」と聞いて翌年参加したのが2016年10月の第2回開催です。

ひたすら素晴らしいイベントでした。何より、参加者とスポンサーからも高揚感が伝わってきました。これから業界が向く方向はグラベルだ、という思いを強くした日でもあります。

翌2017年も参加し、2019年10月にはダイアテック主導により斑尾で開催されます。今なら理解できますが、同社と中のスタッフが頑張って本場クインシーで開催されるGrinduroに近づけよう、同じvibesを持ってこようと思って血を流したはずで、凄い額の赤字が出たと聞いています。台風が来て天気がエグかったり、なぜか火事が発生したり、これはこれで伝説回です。そして、コロナ禍を押して2021年に開催されたミニGrinduroと言えるMADURO!。なぜかエイジで3位に入り、人生最後になりそうなポディウムに登りました。

Grinduroはアメリカで2回、日本で1回、MADURO!に1回参加したことになるので、おそらくダイアテック社員を除くと僕が日本で一番Grinduroを知る人間かもしれません。そんな僕の視点で今回開催されたGrinduro Japanの思い出を綴ろうと思います。

そもそも参加する予定はありませんでした。米Giro社とGrinduro主催側が袂を分かって、Giro国内代理店であるダイアテックがGrinduroの運営から離れた時点で本場Grinduroのvibesを持ってくるのは難しいし、商業ベースでイベント会社が開催するクオリティは想像ができたからです。しかし、行きませんかというお誘いを受けたので急遽エントリーフィーの約3万円をオンラインで決済しました。3万円というのは米ドルなら$200なので高いとは思いません。むしろ安いです。

Grinduro数日前からX(旧twitter)のTLが阿鼻叫喚だったのですが、キャンプサイトが火気厳禁だと突然発表されたと言うのです。本場のGrinduroはエントリーフィーにキャンプサイト2泊分が含まれるというのが大きな売りです。自転車レースにキャンプ、そしてパーティーを加えたのがGrinduroです。Grinduroの3本柱の1本が倒れてしまったのに等しいです。やばそうな雰囲気がしてきました。

 

土曜日早朝に大阪を出発、白馬まで行くなら白馬岩岳マウンテンリゾートでMTBを乗ろうということで、グラベルバイク(グリズル)とMTB(スペクトラル)を持参して土曜日の夕方から3本走りました。久しぶりのゲレンデでしたが、最高でした。そして、この夜に気づくのです。明日の第1ステージは岩岳のフロートレイル部分を使うのでは?と。第2ステージも下り基調でMTB有利、一旦ランチのため会場に戻るのでバイクを乗り換えて第3、第4ステージを走れば相当タイムが稼げるのではと。

 

 という訳で第1ステージはMTBで走りました。前日に3本走っているのである程度コースも覚えていて、圧倒的有利だっと思います。どうしてもシングルトラックで全走者に詰まるのですが、ひらすら我慢です。マナー悪く抜くとマジで炎上しますので。タイムはエイジで3位という好記録。ダウンヒルでタイトフィットなジャージとレーパンはあからさまに速いです。下りでの加速がエグいです。第2ステージは緩い下り基調だったのですが、意外と怖いというか危なそうな所があったので無難に走って7位。ここで一旦会場に戻ってランチです。

そう言えば、土曜日に受付をしたのですが、最初の方は1時間待ちだったそうです。そりゃそうでしょう。照明のない真っ暗なプレハブで、キットを渡してくれる男性は1人だけ。そのエントリーリストも字が小さくて全然読めない。すると蛍光灯が突然付いて、「電気がついた!」とその男性は喜びの声を上げていました。そんなレベルです。

サコッシュをもらった次はチップを貰うのですが、それも結構時間を要していました。そして最後にはミールチケットを貰うのですが、担当者は日本語がほぼ話せず、そのチケットの意味もほぼ分かってない。なので、こちらもとりあえずチケットを貰ったものの、使い方が分からない。オンラインでわざわざランチのメニューを事前に選んだのですが、結局出店しているフードトラックも参加者もチケットの使い方が分からないので、もうそこにある物を注文して食べるという超適当な感じでした。

 

サコッシュの中身についても触れざるを得ません。これは2017年にクインシーで貰ったものです。サコッシュ、ソックス、ボトル、クリーンカンティーンのカップ、チューブ&タイヤレバーなどかなり豪華です。Garmin UBもそうですが、アメリカのスポーツイベントに参加して、受付で貰えるスワッグは相当豪華です。これにキャンプ2泊と、3食分、ビールまで付いているので満足度は高いです。

今回のスワッグはもう写真にすら残していません。Grinduroのサコッシュは貰えましが、実質内容はゼロでした。敢えて言うなら美味しいPOW BAR4本が貰えて嬉しかったくらいです。そして、土曜日に聞いた驚愕の話は、Grinduro Japanが公式のキャンプサイトとして紹介していた場所は、あくまでも日帰りのための駐車場で、火気厳禁どころか車中泊すら禁止だったそうで、参加者は追い出されたそうです。しかもこの日はタイム計測ありで短いプレレースが開催されたそうですが、タイムが正しく計測された人の方が少なかったという話も聞いており、日曜日の計測が不安になります。

そんな運営だったので、予想はできましたが提供されたGPSのログが難易度高すぎました。おそらくStravaやアプリの上で引いたログなので、正確性に欠け、信用できるのは地面に貼ってある紫の矢印や、コーナーに挿してある紫の小さなフラッグでした。縦横無尽にコースが取られているのですが、誰かの別荘の裏庭、誰かの畑のあぜ道などを使いまくります。これは確信を持って言えますが、絶対に運営は使用許可を取っていませんし、その矢印やフラッグは今でも未回収です。ただ、言えるのは難易度は別にして、それがなかなか面白いコースだったことです。

話が逸れましたが、第3ステージは河川敷の平地直線で3kmほどだったでしょうか。しかし、オフィシャルの地図を見ると8kmと書いてあります。万事こんな感じです。ここは足が終わって32位。ゴリゴリに表彰台を狙っていたのに、暗雲が。

そして第4ステージですが、まぁすごかったです。登りがエグいのはいいのですが、コンクリの下り斜度がエグい。しかもグレーチングが1/4くらいしか入ってなくて、溝を踏むとまず間違いなくパンクするというトラップが何箇所もあり、ディスクブレーキですら無理と思いました。カンチの人はどうしたんだろうと今でも思います。最後の下りはシングルトラックだったのですが、ウェットの上に狭い。乗っては行けましたが、マジで怪我人が出てなければいいですね、というレベル。あと、もし僕が地権者ならトレイルが掘れまくっていたので、めっちゃキレると思います。残念ながら最初の分岐を右に行ってしまい、数分はロスしたのですが、それがなくてもポディウムは無理でした。ステージで23位で総合ではエイジ9位、全クラス合わせて32位でした。

今回はアンドリュー・ジャクソンに会えたのが嬉しい驚きでした。IGでフォローしたら返してくれたので、次回LAに行った時マジで一緒に乗りたいと思います。で、彼はBMXというバックグラウンドからエンデュランスアスリートに転向したのですが、凄い努力していて、今回も自身初めてのプロカテゴリーでのポディウムを狙っていたそうなのですが、なんと第4ステージがノータイムで表彰が無かったのです。

僕は偶然その直後に彼を見かけたのですが、誰かと電話しながら相当落ち込んでいました。実際、即日公開されたリザルトはステージによってタイム計測されなかった参加者が多かったようで、その辺りは翌日に訂正されて、アンドリューも無事3位になっています。

最終的にはなんやかんやで楽しんで帰路についたのですが、「公式」のキャンプサイトから追い出された人や、リザルトが今でも正しく出てない参加者もいることでしょう。しかし、個人的には非常に良い自転車イベント/レースでした。もちろん、最後に白馬岩岳のフロートレイルを下るレイアウトにすればもっと良くなるでしょうが、そこはゲレンデの営業中に走らせる難しさがあるのだと思います。

MTB有利だったと言われていますが、有利そうな第1と第2をMTB走って、残りをグラベルバイクで走った僕でも勝てなかったので、どちらのバイクが有利なのかは相当拮抗している絶妙な設定だと思います。今考えると一番長く、登りがエグかった第4がキーだったと思います。僕は第4で大きくタイムを失っているので、登りが単純に遅かったですね。身も蓋もない感じですが、フィジカルとテクニックの両方があれば、MTBでもグラベルバイクでも勝てるでしょう。

自転車イベント/レースとしては良かったのですが、Grinduroとしてはどうだったのでしょうか。まずキャンプができない。アフターパーティーには行ってませんが、会場の盛り上がりという点でも改善の余地があると思います。参加賞も過去の大会に比べて見劣りします。ボトルすらありませんでした。フィニッシュしてから一応はGrinduroのビールが振る舞われましたが、これも見ていると限られた量しか提供されておらず、すぐになくなっていました。これがGrinduroであるとすれば本家のGrinduroは改善を要求すべきだし、Grinduro Japanの運営会社は参加者から今大会のフィードバックを得るべきです。

さんざん書きましたが、Grinduroと思わず、何か別のグラベルイベントだと思って参加すると何も不満を抱かず、気持ちよく走って帰れると思いますので、もし次回あればそういう気概で参加したいと思います。ここまで来ると怖いもの見たさです。初回なのであまり厳しく言い過ぎるのもフェアではないし、今後に期待したいです。ただ、最後に運営側が挨拶で述べていた感じではかなり含みがあったそうなので、正直次回開催はよく分からないです。もしかしたら焼畑農業的に別の開催地を選ぶかもしれないし、運営会社が変わるかもしれません。

 

 

今回は乗る練習の粉吹きロングサーマルジャージと下りではちゃんとしてるジレを着用しました。さすがに白馬は寒かったのですが、ジャケットなしでも大丈夫で、なんなら強度が上がると暑いくらいでした。生地を必要以上に伸ばすと白くなるという問題はありますが、5,700円[税込]は破格と思います。普通なら18,000円[税込]にしたい所です。サーマルのカーゴビブショーツも同じ価格でこの土曜日に販売します。

今まで、幾多の自転車レースやイベントに参加しましたけど、個人的には楽しめなかったことは皆無です。そこに行けば知った顔もいるし、なんやかんやで楽しくなってしまうんでしょうね。土曜日は馬喰町、日曜日はふじてんでお会いしましょう。

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2件のコメント

Grinduo is a great franchise. Using the name “Griduro” comes with a responsibility. Expectations are high. I know organize perfect race is difficult. Good luck.

Teisuke Morimoto

Question:
How many events have you designed and organized?

Adam Cobain

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