投稿日 2022/08/25
「欧米」とざっくりアメリカとヨーロッパをまとめて言うことがありますが、関西というだけでも京都大阪神戸奈良と全て違いますから、「欧米」はかなり乱暴な表現と言えます。
欧米間では文化的にも大きな違いがありますが、身近な例で言うとコーヒーです。日本のコンビニやアメリカのガソリンスタンドで買えるそこそこのコーヒー、スタバのアメリカーノ、あんな感じのコーヒーをイタリア、スペイン、ポルトガル辺りで飲もうと思うと意外と難しいのです。
観光客が行かないようなナポリ近郊の路上なんですが、コーヒーが飲みたくなって街角のスタンドで「アメリカーノ」と注文すると、「おまえは何を寝ぼけているんだ」みたいな顔で左右に首を振ってきます。価格は€1かそれ以下です。これがコーヒー、Caffèなんです。日本ではこれをエスプレッソと呼びますが、イタリアではエスプレッソマシーンで抽出したショットがコーヒーです。なのでわざわざエスプレッソとは言わないのが習慣になっているようです。
以前の記事を参照して貰えると分かりやすいですが、New England IPAが本場ニューイングランド地方では単純にIPAと呼ばれているのと近いですね。
ニューイングランドIPAをニューイングランドで飲んだ話 [1]
Caffèには袋入りの砂糖が2つくらいと、かき混ぜるための短いマドラーのようなものが付いてきます。砂糖を入れてから軽く混ぜてマドラーをシュッと画像に写っているゴミ箱に捨てるのがカッコいいです。即座に飲み干して、底に残る、飽和して溶けきっていない砂糖をすすってからカップをゴミ箱に捨てると颯爽と立ち去るのです。
ここはエスプレッソ発祥の地と呼ばれているらしい、カフェ・ガンブリヌスなのですが、アメリカーノを頼んだものです。アメリカーノとは思えないほど黒くて、量が少ないのです。
これがミラノのカフェです。僕が一番好きなスタイルなのですが、カップにエスプレッソを落とし、別途サーブされるお湯で薄さを調整するタイプです。これは最高です。ぜひ日本でも普及して欲しいと祈っているのですが。
スペインでもそれほど状況は変わりません。これはサンセバスチャンのカフェで朝食を頼んだ図なのですが、同じくアメリカーノとは思えない色と量です。ハムの乗っているのはトーストで、ハムの下はアボカドとサーモンだったと思います。バスクの食文化はイタリアにも負けないほど素晴らしいです。
ポルトガルはリスボンの旧市街にあるカフェです。これもアメリカーノです。最近、日本でもブームの兆しがあるらしいリスボン名物のエッグタルトは€1です。
ポルトガルのポルトです。後ろに見える生搾りオレンジジュースのマシン、ポルトガルのスーパードライ的存在SUPER BOCKのタップ、エスプレッソマシンと、その上に見えるモンスターのサインなど、見所が色々あって味わい深いですが、これもアメリカーノ。
半ば意地になってヨーロッパでアメリカで飲めるようなアメリカーノにこだわるなら、おとなしくスターバックスに入ればいいのですが、さすがにためらう訳です。やはりローカルなものを味わいたい、もっと言うと世界統一価格なので高いはずですから。これはポルトのスタバですが、アメリカや日本では見ない、その佇まいからは強烈な引力を感じます。
しかし、最終的にはその引力に魂を引かれてしまいます。ミラノにあるイタリア初のスタバで、なんとオープンしたのが2018年とつい最近。逆に言うと、イタリアのコーヒー文化があまりにも堅固すぎて、これくらいのレベルでやらないとスターバックス帝国はイタリアというマーケットを崩せないんでしょうね。
とは言え、地元のパン屋からフードの供給を受けるなど、かなりイタリア向けにローカライズされています。飲みたかったアメリカーノもクレマの感じがアメリカで飲むものと違うように見えます。
どうやら、スターバックス帝国の臣民は多いようで、観光地に必ずスタバがある理由がやっと分かりました。多少高くてもこの安定感、清潔さ、安全さ、引力の強さはかなりのものなのです。
ですが、最近はもっぱらマッキネッタです。イタリアが生んだ最高の発明と言われているそうですが、これはローマの宿にあった備品で淹れているところです。
ビアレッティ エスプレッソメーカー 直火式 モカエキスプレス 2カップ用 コーヒー マキネッタ 0001168/AP
あれだけ浅煎りの豆で淹れたドリップやエアロプレスが好きだったのですが、最近はもっぱらこれでエスプレッソを抽出してからお湯で割っています。おすすめです。
イタリア共和国にはスターバックス帝国に屈せず、ぜひ持ちこたえて欲しいものです。