投稿日 2025/03/11
僕がマデイラという島でMTBレースが行われているというのを知ったのはEWSのYouTube動画でした。ダウン・トゥー・オーシャンの永遠に続くシングルトラックに、限りなく青い空、ロケーションだけ見れば全てのMTB乗りが憧れる条件を全て兼ね備えていました。すぐにGoogle Mapsで調べて驚いたのは、ポルトガル領ではあるものの、アフリカ大陸の西側に浮かぶ、リスボンから1,000kmも離れた奄美大島ほどのサイズの島だったことです。名物はマデイラワインと、バナナを筆頭としたフルーツ、花、そして島出身の有名人はクリスティアーノ・ロナウドです。
自身がオーナーのホテルCR7の前に立つ銅像。サッカー好きの識者に聞くとゴールした後のポーズだそうです。
この決してアクセスが容易とは言えない島がMTBの名所になったのには色々な偶然が重なったと思うのですが、標高1,862mのルイヴォ山から海岸線まで山が広がり、ほとんど平地が存在しないという点と、年間平均気温が20℃という常春の島であるため、いつ行ってもMTBのベストシーズン、ベストではなくとも最低限は楽しめることが保証されたトレイルコンディションのおかげでしょう。また、昔からバケーションのために多くの人が訪れているため、欧州の主要空港から直行便が飛んでいることも大きいです。
さて、トリップガイドと名乗ってしまった以上はなるべく実践的な内容にしようと思っています。これを読んでから実際にマデイラに行ってみようと考えて頂けるなら、この長文を書いた甲斐があります。しかし、単純に観光に行くなら強くおすすめできるのですが、MTBに乗りに行くとなると万人にはおすすめできません。特に僕のように中年男性1人で行くというのはもはや正気の沙汰ではないというレベルです。トリップガイドと名乗りながらも、マデイラが悪い方向でやばい理由を今から順番に説明しようと思います。
●航空券の高さが異常
まずはコスト的な問題です。伊丹からリスボンまでの往復がANAで202,630円でした。チケットの価格から逆算して今回は2月に決めたのですが、例えばたった今ANA公式でハイシーズンの7月を調べると40〜120万円の幅でした。つまり安くても40万円するのです。今回は伊丹-羽田-ヒースローという旅程で、ヒースローからリスボンまではコードシェア便でTAPエアポルトガルでした。さらに別でTAPエアポルトガルのチケットをオンラインで直接、リスボン-フンシャル(マデイラ)往復を取りましたが、こちらは自転車のケースがあるため預け入れ手荷物分を1つ購入して合計でUS$182でした。本来であれば伊丹からフンシャルまで通してチケットを買いたかったのですが、こうするとチケットの価格が天文学的数字になったので、今回は分けての購入となっています。合計では202,630円+US$182なので23万円ほどになります。なんとか許容できる数字でしょうか。
それにしても乗り継ぎが多すぎます。人間が乗り継ぎする分には頑張って自分が動けばいいのですが、ヒースローとリスボンで荷物がトランジットに失敗して届かないおそれがあります。実際、往路のリスボンで自転車のケースは届いたのですが、もう1つのバッグが永遠に流れてこないのでLost & Foundで紛失の手続きをしていると、後ろのドアから「あったよ!!」と僕のバッグが登場するような場面がありました。トランジットが多ければ多いほど荷物が紛失するリスク、遅延で乗り継げないリスクが増えるのですが、トランジットの少なければ少ないほど航空券の価格は高くなるので、どこでバランスを取るかでしょう。
スターアライアンス系ならマデイラ島へのアクセスはTAP エアーポルトガル一択になります。
僕の場合はスターアライアンスのゴールド会員であるため、この恩恵、具体的にはより多くの無料預け入れ荷物や優先チェックイン、利用できるラウンジ、優先搭乗などを最大限に使うため同じアライアンスのTAPエアポルトガルを選んだのですが、今回はこのTAPエアポルトガルに苦しめられたような気がします。往路はオーバーチャージを払っていないのですが、復路のリスボンでバイクのケースに$130をチャージされました。こういうのは現場で文句を言っても仕方ないので大人しく支払いました。ANAで買ったチケットなので、この区間は国際線の一部、つまりはANAのコードシェア便になるので、オーバーチャージは不要なのでは?と思ったのですが、実際に乗るエアラインの裁量になるのでANAに文句を言っても仕方ないのです。
本来であればリスボン-フンシャル(マデイラ)の両区間でチャージされても仕方なかった所、ラッキーなことに1/4のコストで済んだと考えるほうがいいでしょう。さらに、復路のリスボンからヒースローが遅延して、羽田行きに接続できなかったので、仕方なくヒースローT4横にあるヒルトンで1泊する羽目になったのですが、TAPエアポルトガル持ちでヒルトンに泊まって翌日にロンドンを21年ぶりに観光できたので、今となっては良い思い出です。
最後は21年前にバーミンガムに行った以来、4回目のロンドンでした。
このように、マデイラへのアクセスは決して簡単ではない上、荷物が紛失したり乗り継ぎできないリスクがあり、リスクの低い旅程にするとチケットが簡単にハイシーズンなら100万円に迫ってしまうのです。予算が潤沢な方には羽田から欧州のどこか大都市に飛んで、そこからフンシャル(マデイラ)に直接飛ぶような旅程をおすすめしたいです。これが一番楽で、リスクが低い旅になると思います。その分、オーバーチャージを払ったりでコストは必要だと思いますが、お金で解決できるような問題はお金で解決すべきです。
●試されるフィジカル
僕のように普段は1日を通して椅子に座っていて、週に2-3回ほどeMTBに乗る程度の運動量の中年男性にとって、マデイラに到達するまでがすでに冒険です。EVOCのケースともう1つのバッグを引きずっての空港まで移動はもちろん、ヒースローのターミナル内の移動は絶句する距離を歩かされるし、マデイラに到着した頃には30時間を超える旅になっているので、1AMに空港に到着し、迎えのクルマに乗って2AMに宿のアパートメントにチェックインした頃には疲労困憊になっていました。本来であれば火水曜日とライドして木曜はレスト、そして金土日曜日と計5日のスケジュールなのですが、火曜日の早朝に到着したため、レストなしで水木金土日と5日間連続でライドを行い、月曜日の朝からリスボンに向かうという強行スケジュールに近いものでした。しかも、普段は渡米することが多いのですが、久しぶりの欧州だったので時差ボケの解消に最後まで苦しみました。日本から疲れ切った状態でマデイラに降り立ち、さらに時差ボケに苦しみながら5日間連続走るというのは、今後も体験できないような素晴らしい体験だったのと同時に、心身を痛めつける苦行でもありました。マデイラに行く際は、事前にフィジカルを仕上げて万全の状態で臨むのをおすすめします。
●要求されるハイレベルのギア
毎日3,000mの標高差をシングルトラックで下り、それを5日間連続で行うというのは空前絶後、国内では絶対にあり得ない体験です。なので、使用するギアもそれなりのものが求められます。まず、今回参加したマデイラのMTBツアー会社FREERIDE MADEIRAのウェブサイトをきっちり読み込んだのですが、ライドはシャトルなのでほぼ下り、ヘルメットはフルフェイスを強く推奨していました。これはCANYONのプレスローンチでニースに行った時に同じ目に遭ったのですが、世界チャンピオンが練習に使っていたような激しいシングルトラックをさんざん下ってトレイルヘッドに出てくると、そこにはバンが停まっていて、すぐにバイクを積み込んでから別のトレイルヘッドまでドライバーが狂ったように飛ばして同じことを永遠に繰り返すのです。上りがほぼ無いと聞くと楽に思えますが、逆です。ずっと緊張感を持って下り続ける必要があって、一息つけるのはバンの中だけです。
大正解だったフルフェイスですが、最終日の5日目は半ヘルにしてみました。
なのでフルフェイスを購入しました。顎が外れるような中途半端なモデルではなく、ちゃんとしたフルフェイスです。グローブももう少しヘビーデューティーな下り寄りの物も追加しました。マデイラは1日の中に四季があると言われているので、ウェアも洗濯を考えると3セットを用意しました。RaphaのGore-Texを使ったジャケットは最高でした。国内でシングルトラックを走っていて、稜線などで爆風に晒されるような経験はほぼできないので、MTBウェアにお金を掛ける人が少ないように感じます。シングルトラックが森の中で強風が吹かず、過酷な環境が走ること少ないせいだと思いますが、マデイラでは低木しか生えてない様な稜線のトレイルを下るシーンも多く、さらに1日の中に四季があると言われるほど天気が変わりやすいので、ソフトシェルジャケットでは十分ではないと感じる場面も多く、結果的に5日間のうち2日はGore-Texのジャケットを着用しました。Gore-Texのパンツまでは必要ないと思いますが、ショーツは止めたほうがいいと思います。パンツの方がプロテクション性が高いのと、泥水の中を走っても足が汚れないのが良いと思いました。
晴れてはいるもの、路面はドロドロという日もあるので、Gore-Texのジャケットやパンツは持って行ってもよい装備です。
フルフェイス用にゴーグルも用意しました。日本で使っている時はシングルトラックが暗いのでクリアレンズ一択ですが、ワイドオープンなトレイル走るマデイラを考慮して、ミラーレンズだけ別途用意しました。これを使う場面はなかったのですが、ミラーの方が良かったと思わせる快晴の日もありました。当然Raphaのニーパッドも持参したのですが、1つだけ用意できなかったのが脊椎保護ベストでした。最近、この手のベストは薄くなっているのでジャージの下に着ても目立たないようになっているのですが、大阪近郊のトレイルをゆるく走っている限りは必要だと思ったことはほとんどありません。実は海外通販で購入していたのですが、ギリギリになっても届かなかったのでキャンセルしたのです。実際に他の参加者を見ていると、着用率はかなり高かったので、持参すべきものの一つだったと思います。
●要求される高いバイクのスペック
今回はキャニオンジャパンからトレイルバイク寄りのスペクトラルをお借りしましたが、実際5日間を走り終えた今思うのは、ENDUROバイクのストライブの方が良かったということです。スペクトラルでも問題なく走れましたが、本当に99%が下りなので平地や上りでの性能を考慮する必要がありません。なので下りを得意とするストライブならもう少し楽に走れたでしょう。今回は後輪を2回パンクしましたが、これは主にタイヤが原因です。その日の担当ガイドにアドバイスされたのですが、マデイラで走るならDHケーシングのタイヤでなければサイドカットするのでダメだと。E-MTBショップがあるから、そこでDHケーシングのMAXXISが買えるよと具体的なことまで教えてくれました。
ちなみにガイドが乗るバイクとレンタルバイクは同じスコットのランサムなのですが、サスペンションは前後170mmトラベルで、さらに前後Cush Coreのタイヤインサート入れているとのことで、マデイラの悪路に最適化されたセットアップでした。なので、普段国内で山サイの延長線上のように使っているトレイルバイクでは体がもたないと思います。富士見や岩岳でもなんなく下ることができるような、ダウンヒルバイクに近いスペックのENDUROバイクを持参すると余裕を持って楽しめるはずです。
●向こう側にある桃源郷
ここまではマデイラ島でMTBに乗るには航空券が高いし、行くだけで体力がいるし、ちゃんとしたバイクとギアが必要だし、とにかくハードルが高いという話に字数を費やしましたが、この難関をクリアすると実はもうやることがありません。現地で乗り倒すだけです。僕自身も航空券を全て決めて、バイクをキャニオンジャパンからレンタルすることを決め、ライドのためのギアをある程度揃えると、あとはそこそこ乗り込んでコンディションを上げることくらいしか残っていませんでした。
アメリカでトレイルに行くとなるとまた別の話です。Trailforksで良さそうなループのトレイルを探し、Garminにログを転送、さらにトレイルヘッドの治安なども調べ、トラブルを想定して水、補給食、ツールなどの装備品を比較的念入りに準備して走ることになるのですが、これを走りたいトレイルの数だけ行うのです。しかし、マデイラ島ではFREERIDE MADEIRAのツアーに参加したので空港までの送迎、宿泊、ガイド料のフルパッケージは驚くくらい楽でした。クルマの運転すらしなくていいのです。
当初は自分でレンタカーを調達してホテルを取り、ガイドの部分だけシャトルを使う予定だったのですが、調べれば調べるほどFREERIDE MADEIRAのパッケージが激安で利便性が良く、これを選ばない理由がないというレベルで完成度が高かったのです。具体的には7泊8日の宿泊と5日間のトレイルガイド、空港までの送迎を全て含めて1095€でした。僕は別途10€/日の保険に加入したのでさらに50€を払っていますが、これもケチらずに加入したほうがいいと思います。海外で怪我してヘリで運ばれて数週間単位で入院すると数千万円レベルの請求書が来ると思うので、クレジットカード付帯の保険では心もとないです。
もちろん、予算がある方はホテルを街中の海沿いにあるクリスティアーノ・ロナウド所有のホテルCR7にグレードアップして、さらに利便性を高めるこもできるし、ヴィラのような高級物価を借りることもできます。僕は最も安いプランだったのでダウンタウンから少し東の旧市街にあるアパートメントに7泊したのですが、毎朝バンがピックアップに来るCR7までは自走で10分ほど、帰りは少しだけ坂を上って帰る必要があったり、ダウンタウンから離れているのでスーパーマーケットやレストランが周囲にないためやや不便だったのですが、僕はこの旧市街の雰囲気が好きだったので、まったく問題はありませんでした。アパートは1Fで出入りもしやすく、フルキッチンでWiFiもそこそこ速く、地下には無料で使える洗濯機があるなど、申し分のない設備でした。
朝食はローカルの店も良いですが、スーパーマーケットPingo Doceのフードコートもおすすめです。
ちなみに、CR7に宿泊してもそれほど高くなる訳でもなく、ホテルの眼の前にバンが毎朝9時10分にピックアップにきてくれるし、ビーチは目の前でスーパーマーケットやレストランなどが多くある街中なので、予算があるならCR7をおすすめしたいです。
●実際はどんなライドになるのか?
ライドは集合場所のCR7前に9:10に集合すればバンが迎えにきてくれます。おそらくFREERIDE MADEIRAを9:00に出発していると思うのですが、もしバイクをレンタルするならもう少し前、8:30あたりには到着して手続きなどをする方が良いでしょう。今回はヒップパックにポンプや工具、パンク修理キットにTPUチューブなどいつもの携帯品を持ったのですが、もう少し大きなバックパックに水や食料品を持参してもライド中はバンに荷物を置いておけるので、無理に荷物を削る必要はありません。パスポートだけは最も重要なのでヒップパックに入れていました。基本的にはバンはドライバーとガイド、そして5-6人ほどの参加者で構成され、バイクを積載するためのトレーラーを引いています。ドライバーが降りてきて、バイクを持ち上げてラックに固定する方法を教えてくれるので、以降はなるべく自分で積み下ろしをしましょう。
バンに乗り込むと即座に山へと向かうのですが、ドライバーが恐ろしく飛ばすのです。もちろん、運転は上手いし、怖いと思うことはないのですが、とにかくぶっ飛ばすので、下を向いてスマホなどを見ているとクルマ酔いします。自分のことを乗り物酔いに対して耐性のある人間だと思っていましたが、そんな耐性は吹き飛ばされました。途中で「このままだと吐く」と気付いたので、積極的に外の風景を見るようにしたのですが、急斜面の狭い土地に徹底的に植えられたバナナの木など、日本では見ることができな絶景なので飽きることがありません。とはいえ、5日目にはバンの運転にも慣れ、酔わないようになりました。
バンは2種類あり、こちらは大きい方です。とにかく女性の割合が高く、この画像では女性の方が多いです。
フンシャルは島の南部に位置するのですが、大まかに島の西側と中央部には人工的に作り込まれたトレイルが多く、島の東部のトレイルは天然系のトレイルが多い傾向です。人によってそれぞれ好みは分かれると思いますが、どちらも面白いです。Stravaのログを見返すと、西側に3回、中央部〜東部に2回となっていました。初日は西側に行ったのですが、ガイドが「ロングドライブになる」と予告した通り、フンシャルから1時間のロングドライブでした。
これはGarminで1日中ログを取ったものですが、150kmの走行で獲得標高は7,000mほどです。初日は滞在しているフンシャルから1時間以上走って島の西部に向かいました。
バンがトレイルヘッドに到着するとわらわらとバンから降りてラックからバイクを降ろし、ライドの準備をするのですが、とにかく参加者の動きが特殊部隊かのような無駄のない動きで、あっという間に走れる用意をしてガイドの前に整列するのです。僕はDJIのカメラをチェストマウントで装着したり、準備でやや手間取ってしまったのですが、この感じ、スノーボードを思い出しました。滑れるメンツで山に行くとクルマを降りてからの用意が異常に速い。そしてリフト降りてからビンディングを装着するまでが瞬時で、あっという間に板のノーズをフォールラインに落として消えて行く感じです。つまり、参加者のレベルはかなり高いのです。
ただ、安心してください。ガイドが走り始める前にトレイルの特徴を口頭でちゃんと説明してくれます。旗が刺さっているジャンプはロールできないのでエスケープにいけ、ドロップオフがある、分岐は右だ、路面が滑るなど事細かに説明してくれるので心の準備ができます。なので初見で走るよりも安心感があります。ただ、走り始めてすぐに分かりましたが、ニースの時と同じでした。ガイドが「フローだ」と説明してくれても、バームはブレーキングバンプでガタガタ、岩場がガレガレで、アメリカの綺麗なパンプトラックのようなフロートレイルに慣れてしまった僕としては「どこがフローやねん」と内心でツッコミを入れていたのです。
5日間でおそらく3人のガイドが担当してくれたのですが、全員がポルトガル人で1人はマデイラのローカルでした。19才の彼はガイドの資格を取ったばかりで、ジュニア時代にはポルトガル代表だったそうです。なので、ガイドは全員がもれなくとんでもないレベルの乗り手で、後ろから見ているとバイクの挙動が異次元でした。そして、乗るのが上手いのは大前提として、バイクの修理、サスペンションのセッティング、英語、ファーストエイドそしてホスピタリティなど、ガイドのための知識をちゃんと身につけているのです。なのでこちらのライダーとしてのスキルは一発で見抜かれるので、もしレベルが低いと判断されたら翌日にはもう少しレベルの低いバンに送り込まれるだろうし、もう全てをゆだねる感じです。全員のガイドが超クールで、口数は最低限で無駄なことは一切言わず、その日のグループを差配する姿にはしびれます。
19才のガイドは無口でクールなやつでした、仕事は完璧で、写真さえ上手かったです。
3日目にサイドカットしたのですが、自分で修理するから今回のシャトルはスキップすると僕が言うと、ガイドは大丈夫だすぐに直そうと言ってTPUチューブに交換して空気を入れてくれました。しかも、僕が出してきたペドロズのタイヤレバーを見て「いいの持ってるね」と褒めてくれるなど、いちいち凄いなと思ったのです。日本的な過剰なおもてなしではなく、最低限必要な分だけのサポートを素早く提供するというスタイル、非常に好ましかったです。
とにかくガイドが有能なのでツアー参加者のスキルに見合った、その日の天候を考慮したトレイルを選んで走るのであまりトラブルも起きないのですが、そもそも参加者がハイレベルだと思いました。意外とレンタルバイクのスコットで走る参加者が多いのですが、レンタルだから上手くないということは一切なく、話を聞いてみると世界中のトレイルを走ってます、みたいな猛者が逆に多かったです。そして、一番驚いたのは女性が多かったことでしょうか。肌感的には40-50%女性で、しかもめちゃめちゃ上手いのです。
僕自身、日本人としては比較的世界中のMTBトレイルを走っている方だと思いましたが、僕より遥かに経験豊富なライダーがヨーロッパ中からマデイラに大集結しているのです。しかも、ヨーロッパの主要都市からは直行便が飛んでいるので、1年に2回はバケーションで来ます、みたいな人が多数いました。なので、わざわざ自分のバイクを来なくてもギアだけ持参してバイクをレンタルする人が多いのです。
僕がスペインやポルトガルに好んで行く理由はその食文化ゆえです。日本と同じく蛸を好んで食べるのですが、日本で食べる以上に美味しいです。
ライドが最高なのはもちろんですが、ランチはローカルのレストランに連れていってくれます。2ヶ所のレストランに行ったのですが、どちらも観光客は来ないような場所にあり、シーフードも肉も素晴らしく、飲み物と食後のエスプレッソを入れても25€ほどで楽しめます。飲み物はぜひマデイラローカルのBRISAというトロピカルフルーツのジュースを飲んでください。僕は連日マグロ、タコ、イカ、鱈などシーフード三昧でしたが、どれも忘れがたい美味しさで、おすすめはタコです。他の参加者はビールを飲んだりしていましたし、最後にはきっちりエスプレッソで締める人が多かったです。食事の時間はふんだんに取るのがポルトガルらしいと思いました。
ランチ中はレストランの真横にバンを停めるのでセキュリティも安心です。そもそもマデイラは大変治安が良いです。左に見えるゴールドのバイクがスコットのレンタルバイクです。
ランチの後にも容赦なくトレイルに連れて行かれるのですが、3時半あたりまでにはトレイルから引き上げてFREERIDE MADEIRAまでバンは爆走して戻ります。店の裏にはバイクを洗うスペースがあり、4台同時に洗車可能です。バケツにブラシ、洗剤なども用意されているので、かなり綺麗に仕上げてアパートメントまで戻ることができます。FREERIDE MADEIRAからアパートメントまでは多くの観光客がバスに詰め込まれているのを横目にマデイラの目抜き通りをゆっくり走って20分ほどですが、とにかく白人の老夫婦という組み合わせが多く、僕も老後はあのような生活を送ることになるのだろうか?と頭をよぎったのですが、あと10年くらいは自転車を抱えて世界中のトレイルを回りたいものです。
こちらはエスペターダというマデイラの名物料理で、串の上からバターを垂らしている図です。
●マデイラで天啓に打たれる
このような1日を5日連続で過ごした訳ですが、通常は途中で1日休息日が入ります。しかし、火曜日の早朝に空港に到着したスケジュール上、このような強行軍となりました。毎日3,000m以上のシングルトラックを下ると、それこそ1日で日本で走るシングルトラックの1年分を下り、数年分のバームを曲がるようなものです。スポーツを上達するには多くの場合地道な反復練習が重要なのですが、浴びるようにシングルトラックを下った結果、3日目にバームを曲がっている時、突如天啓に打たれてコーナリングの極意を得ました。このように走れば自由に曲がれるのかと。この感覚は4日目も5日目にも失われていなかったので、MTBに乗り始めて30年以上、ようやく理解できたようです。何かを始めるのに遅すぎることはありません。みなさんにもマデイラで天啓に打たれてほしいです。
●リスボン
今回はマデイラの後にリスボンで3泊しました。大好きな街リスボンなので、1日くらいはリスボンから西にある山、シントラでライドをしようと思ったのですが、マデイラで燃え尽きてしまって結局は乗りませんでした。シントラには世界遺産の宮殿があり、マデイラと同じような海を見下ろす最高に美しいシングルトラックがあるのですが、どうやらリスボンから電車で1時間くらいでアクセス可能なので、気合があれば全て自走でシントラのトレイルは走れそうです。大変有名なトレイルで、MTBメーカーが新車のプレスローンチをよく開いています。シントラでのライドは今後の課題とします。
リスボンは最高です。今度はシントラに走りに行きたいです。
●最後に
今回マデイラに行って思ったことは、バイクはレンタルでは良さそうということです。EVOCのバイクケースを日本から持参することによりオーバーチャージやトランジットでのロスト、破損問題を心配する必要がありますが、ヘルメットなどのギア類だけを持参するスタイルにするとLCCなどを駆使して安い航空券で済むのです。マデイラで5日間走るとバイクも激しく消耗するし、そういう意味では現地で借りてしまうのが一番理にかなっています。確かに自分のバイクでかの地を走ってみたいという気持ちはわかりますが、現地に行ってしまうと思います。バイクはなんでもいい、ここを走れるだけで最高だと。
そこまで危ないことはやりたくないけど、マデイラを走ってみたいという方にもオプションがあります。E-BIKEツアーというプランがあり、こちらはシャトルを繰り返してシングルトラックを下るような激しいスタイルではなく、川沿いの比較的フラットなシングルトラックを走るようなツーリングスタイルで、マデイラの大自然、咲き乱れる花を楽しみたいという方におすすめです。ぜひCR7に宿泊してラグジュアリーに過ごしてください。
とにかくマデイラには世界中からMTB愛好家が集まるので、一般レベルのMTB乗りが考えうるサービスは全て用意された、この世のMTB天国です。高効率でライドするため、究極までPDCAを繰り返して煮詰められたサービスを享受してみませんか。
実際にマデイラに行ってみたいという方、僕が分かる範囲でお答えしますので、質問などあればコメント欄でお気軽にご質問ください。