投稿日 2024/08/06
こちらは2018年11月に産経デジタルが運営していた総合自転車情報ポータルサイト「Cyclist」に寄稿したものです。Cyclistが2021年3月に終了して記事が失われてしまったので、こちらに転載します。内容は2018年時点の話なのですが、今でもあまり状況は変わっていないと思いますので、機会があればアップデイト版の取材をしたいと思います。
近年はLCCが普及し、世界中から多くの観光客が日本を訪れていますが、東京五輪を控え、この流れは加速することはあっても衰えることはないように見えます。また、行政もしまなみ海道の成功をモデルケースに、各地でサイクリングルートの確立に注力しています。
当然、海外からやってくるサイクリストの玄関口は空港である場合がほとんどですが、都心への抜群のアクセスを誇る羽田空港を選ぶ観光客も多いことでしょう。 大阪に居住する筆者は出張で伊丹空港から羽田空港に降り立つことがあるのですが、2年前に輪行で自転車を持って行き、羽田からそのまま自走で都心を目指す予定を立て、第2ターミナルから走り出しました。しかし、空港から脱出するにはGoogleマップはまったくあてにならず、交番で聞いても明確なルートは分からないという事態に陥り、1時間ほど国内線ターミナル内で彷徨ったあげく、ほうほうの体で半泣きになりながら脱出したことがあります。
海外には色々なサイクリストがいるもので、クレジットカード1枚だけ持って旅をするようなミニマムなスタイルもあります。そんなサイクリストが羽田空港国内線の、しかも第2ターミナルに降り立ち、そこから都内を自走で目指すようなケースはもっと最悪の事態になる可能性があります。自転車の侵入が禁止されている車道に入ってしまい、事故が起きてしまうことです。 自転車の街として名高いアメリカのオレゴン州ポートランドのポートランド国際空港にはターミナル内に自転車のメカニックスペースが用意され、メンテナンススタンドに工具も完備されています。つまり、自転車で出発する、自転車を持って到着する、その両方のケースを想定しており、もちろん空港から街中へも自転車で容易にアクセスできるよう考慮されています。
もし仮にポートランドのような街で自転車でターミナルまで走って行けないような空港案を発表すると、強烈な市民の反対運動にロビー活動が巻き起こり、自転車フレンドリーな空港にプランが変更されるのは自明です。 空港内で迷子になったのきっかけに、色々と調べてみると驚愕の事実が発覚したのですが、そもそも羽田空港へは自転車でのアクセスが全く考慮されていないのと同時に、空港利用者が使用できる駐輪場さえ用意されていないのです。
各地でサイクリングルートが拡張され、素晴らしいサイクリング・エクスペリエンスを提供する国、ジャパンの窓口である羽田空港がこの受け入れ体制では少々心許ないのですが、その不都合な真実をつまびらかにするため国内線第2ターミナルから脱出するルートを実走レポートにてお届けします。
第2ターミナルに到着した図です。後述しますが、第1ターミナルの場合はもう少し楽に空港から脱出可能です。
EVOCのバイクケースはスーツケースサイズのコインロッカーに預けました。このサイズのロッカーは数が少ないため争奪戦の様相です。
車道側に出ます。海外で空港や駅のターミナル内で自転車を押して移動するのはよく見る風景なのですが、同じことを国内で試みると悪いことをやってる感じがします。実際、警備員や職員が飛んできて、怒られることがあるのですが、彼らの言い分は車両の持ち込みなので禁止、輪行袋に入れろと言う場合が多いです。まだまだ理解を得るべき課題だと思います。
出て右手に行った果てにある第2ターミナル交番のキリっとしたカッコいい警察官の方に自転車ルートを確認。地図を出して親切に教えてくれました。ただし、「自身で走ったことはありません」とのこと。たまに自転車ルートを聞きにくるサイクリストは存在するそうですが、「基本的に自転車で来るように考えられていない」とも。
まずは第1ターミナルに移動します。国内線ターミナルには競輪のバンクのような形状で車道が通っており、その直線部分にそれぞれ第1ターミナルと第2ターミナルのバス停があるのですが、直線の中央付近に横断歩道があり、車道を使わなくても歩道でショートカットして反対側に移動可能です。具体的にはバス停の8番と9番の間に位置しています。
向こう側に見えるのが第2ターミナルです。
第1ターミナルに到着しました。バス停の番号が減って行く方向に移動します。ここは歩道を押して移動しましょう。乗車すると注意されます。
第1ターミナル交番が右手に見えてくると、横断歩道があります。ここから自転車通行可になります。
すぐにトンネルが見えます。
トンネルの出口はスロープになっており、自転車の乗車もここまで。
スロープを上がると横断歩道があり、右側は施設内なので進入禁止、左側に進みます。ここは自転車で到達できる、航空機が一番近く見えるスポットの一つでしょう。
ここは最大の難所の一つです。左の車道を行ってもダメだし、右の高架に進んでもダメです。中央の歩道を行きます。
羽田空港には駐輪場が用意されてないのですが、ここが最大の非公式駐輪場になっています。
自転車で来ることは想定されておらず、駐輪場さえ用意されてない国内線ターミナルなのに、自転車のスピードを注意する看板はあるのが不思議です。
トンネル前半は下り基調なのでスピードに注意です。歩行者とのすれ違いは困難です。また、微妙な段差、濡れている個所が多数あり、MTBなら問題ありませんが、ロードバイクなら走行に注意が必要です。
トンネル出口付近には異常に狭くなっている部分があり、760mm幅のハンドルバーではギリギリでした。ここが環八の起点となります。
そのまま進むと国際線ターミナルに到着です。今回の目的のもう一つ、初めて羽田空港に設置された駐輪場の視察です。当然、今までは駐輪場が用意されていなかったので、この状態です。
2018年11月1日午前5時から供用開始ということで、まだ稼働はしていませんでしたが、空港職員は事前登録制、一般利用者は最大10日間までの利用、キャパシティーは150台とのこと。 ようやく、初めて公式の駐輪場が国際線ターミナルに設置されたので、当然国内線ターミナルにも同じく設置される流れに期待したいのですが、実は国際線ターミナルに駐輪して、そのままターミナル間移動に無料連絡バスを使うと7分で国内線第2ターミナルに行くことができるので、現状でも利便性はかなり向上しています。
後は、国内線第2ターミナルから国際線ターミナルまで自転車行く場合のサインが整備されると、もう少しサイクリスト・フレンドリーな羽田空港になるでしょう。今後に期待したいです。世界は少しずつ良くなっています。