1台目のMTBにXCバイクはやめておけ

1台目のMTBにXCバイクはやめておけ

投稿日 2024/07/11

ITさんからお題を頂いたので今日はXCバイクのお話です。

 Xじゃなくてtwitter時代にこの話題をtweetしたら、とんでもないヘイトとお叱りを頂いたことがあります。大前提として、自分のお金なので、どんな自転車を買っても、どのように改造しても完全に自由なので、僕がとやかく言うことでもないし、XCバイク好きの方がご立腹されるのも当然かと思うのですが、僕は少しでもMTB好きが増えて、末永く乗って欲しいという思いからこのエントリーを書くに至りました。この時点で不愉快に感じるなら離脱してください。

まず、MTBは最も下りに特化したDHバイクから、軽量なXCバイクまで細かくカテゴリーが分かれており、それぞれ完成車ならメーカーがバイクの使い方を想定して最適なタイヤが付いてきます。なんならデザイナーはある程度そのバイクで使用するブロックパターンや太さを想定して、そこから逆算してデザインしているはずです。

なので、そのバイクの目指した方向性というのは細かいジオメトリーを見なくても、タイヤを見ればおおよそ分かります。これはモータースポーツなら2輪でも4輪でも同じかと思います。乗り物というのはだいたいタイヤで決まるのです。

 

こちら、MAXXISの最新XCタイヤであるAspen STです。XCO界のルイス・ハミルトンような存在の、ニノ・シューターという選手が今季から投入しているのですが、僕にはこのタイヤでレースを走るというのは狂気の沙汰に見えます。ほぼ転がり抵抗低減と軽さのみを追求して、トラクションやコーナリング、ブレーキング性能など全てを犠牲にしているのです。

おそらく、ロードバイク愛好家の方がロードバイクを買うようなノリで軽くて速いやつ、という条件でMTBを購入すると、こういう方向性のタイヤが付いてきます。このバイクで山に行くとします。いきなり怪我する可能性がとても高いです。まず、少しでも路面がウェットならブレーキを握らなくても、勝手に谷側に落ちて行きます。木の根なら斜めに入った瞬間に地面に張り付くし、上級者が綺麗に抜重してやっと走れるような代物です。

逆に晴天が続いてカリカリにドライな場合は下りで全然ブレーキが効かなくて止まりません。この恐怖はロードバイクだけ乗っていると味わえないものですね。なので、こういうスリックに近い低ブロックタイヤというものは、テクニックがある人が使うもので、初心者が使うと一番危ないのです。

では、軽量なXCバイクを買ってから、トレイル向けのもう少しブロックのあるタイヤ、例えばARDENTの2.4辺りに交換すれば?実はそんなに甘くないのですよ。ここまでタイヤの性格が変わってしまうと、まずリムとの相性が悪くなります。おそらくもう少し内幅の太いリムに変える方がタイヤメーカーの想定するタイヤプロファイルになります。また、太くなってブロックが高くなったことにより、グリップやブレーキング性能は向上すると思うのですが、次はブレーキ性能に不満を持ちます。そうなると160mmローターから180mmへ交換とか、2ポットから4ポットへのアップグレードが視野に入ってくるのですが、この辺りでさすがに気づくと思います。

「最初からトレイルバイクを買っておけばよかった?」

昔はロードバイク速かったおじさんが長いブランクがあってもそこそこ走れる場合がありますが、これは集団走行のテクニックなど、体力は失われても、うまく誰かを使った省力走行の技術が失われていないからです。昔MTBで速かったおじさんはもっとしぶとく速いです。オフロードの技術というのは一度身につけてしまうと簡単には喪失しません。なので、シクロクロスで活躍するおじさん達がMTB出身者で占められる理由もこの辺りにありそうです。

つまり、FTPは簡単に失われてしまうのですが、オフロードのテクニックは一度身につけてしまうと、簡単には失われない、ここにMTBの醍醐味があります。なので、最初の1台はテクニックの勉強がしやすい、最低でもトレイルバイク、なんならエンデューロバイクをおすすめしたいのです。エンデューロを買うとそれこそMAXXISならMINIONみたいな最高レベルにグリップするタイヤが付いてくると思うのですが、2.5幅にもなるとコンディションが良ければ前ブレーキを全力で握れば鬼のように減速してくれるし、木の根や荒れた路面でも自分の思うラインを走れるし、MTBを操る楽しさでドーパミンが全開で分泌されます。なので、フルパッドでのライドがおすすめです。

なんなら、eMTBを買ってもいいと思います。MTBというスポーツは反復のスポーツという側面もあるので、素振りをするかのように、黙々と本数をこなすにはeMTB以上のものはありません。そうやってラインの選び方、ウェットの走り方、ブレーキングなどを覚えると、少しづつ転がりの軽い、グリップの低いタイヤを使いこなせるようになります。

こうやって身につけた技術というのはほぼ生涯失われない自分の武器になります。まずはしっかりグリップするタイヤでテクニックを学び、そこで初めてグリップしない、よく転がるタイヤを使いこなせるようになります。低グリップのバイクで基礎テクニックを学ぶのは相当な遠回りになります。

マーケットにあるバイクを紹介しておきます。

スペシャライズドのENDUROです。モデル末期のような気もしますが、国内で買えます。

最近モデルチェンジされたTREKのSLASHです。アドラープーリー採用のハイピヴォットバイクなので、TREKらしからぬナウいバイクです。

ひょっとしたら国内で買えないバイクかもしれませんが、キャノンデールのジキルです。こちらもハイピヴォットです。ハイピヴォット車はパワーの損失が多いとか、重くなるとか言われていますが、その分サスペンションの動きは極上になるので、ロードバイク出身でフィジカルがある方が乗るなら、めちゃめちゃ走るバイクだと思いますよ。

僕もまだ乗っていないのですが、CANYONの新型スペクトラルです。KIS採用の最高なやつです。細かい所まで含めて色々良くなってるみたいですね。

ORBEA Japanができたとかで頑張ってるORBEAですが、僕が一番気になるのはRallonですね。めちゃめちゃかっこいい。個人的にはORBEAは最高にいけてるMTBブランドだと思っているのですが、、、。

YETIのSB160です。これを嫌いな人はいないと思います。リッチー・ルード好きとしてはたまらないバイクですね。ブランド自体も、大企業が保有するポートフォリオの一部になるんじゃなくて、独立系のブランドとしてレースチームも運営するなど、その辺りもすごいと思います。

ここまで紹介したバイクはどれも高価だったので、買いやすいハードテイルも紹介しておきます。こちらはTREKのRoscoeです。リアにサスペンションがないので、タイヤのボリューム(2.6")で走破性の向上を狙ったセミファットバイクに近いモデルです。この辺りのタイヤはeMTB向けとして最近はラインナップが異常に充実してきたので、タイヤにも困ることはないし、それなりに走行抵抗はありますが、フィジカルでシバいてください。

ロッキーマウンテンのグロウラーというモデルです。こちらもHTA64°とスラックだし、タイヤもMINIONの2.6という最強タイヤを履いてるのでめちゃ走ると思います。

CANYONのStoicです。フレームは29erなら2.6"、マレットなら2.8"入ります。シートアングルがカリカリに立った感じが今っぽいですね。少し前までこの辺のハードコアな下りに振ったハードテイルというのはイギリスの小規模ブランドや、ハンドメイドのビルダーが得意としていたのですが、最近は大手ブランドが安価で販売しているので良い時代になりました。

今後のXCバイクですが、五輪競技に使われるXCOバイクはレース時間の短縮、コースの過激化によりトレイルバイクのように進化しました。数年前ならダウンカントリーと呼ばれたであろう、もっと下りに適したジオメトリーを持ちます。なので、昔ながらのヘッドチューブアングルがカチカチに立ったXCバイクはグラベルバイクのように使われるようになりました。 上の動画はGarmin UB200での優勝も記憶に新しい、ラクラン・モートンがTour Divideというカナダからメキシコ国境まで、アメリカ合衆国を南北に縦走するルートで新記録(12日12時間21分)を樹立した時のドキュメンタリーです。

これはかなり前から言われていますが、走破性の高いグラベルバイクと、MTBのXCバイクというのは既にオーバーラップしており、その両者をはっきり区別するのは困難になっています。XCバイクは今後、林道や河川敷のグラベルなどシングルトラックというよりはダブルトラックを走るオフロードバイクとしてウルトラロングディスタンス、バイクパッキング用のバイク、王滝、一部では山サイのお供として生き残っていきそうです。

なので!もしグラベルバイクを既にお持ちの方も多いと思いますが、そこからもう1台XCバイクを増車するのは同じようなバイクが増えるだけなので、ますますトレイルバイクを買った方がいいのでは?と思います。

「XCバイクを買うのはグラベルバイクを買うのと同じ」

今回はこの言葉で締めたいと思います。

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5件のコメント

ディスクブレーキキャリパーの用語としては “pot” なので、「ポット」ですね。非常によく見かけますが、「ポッド」は誤りなので修正すべきだと思います。

リングマン

お前が登れないからだろw

トレイルバイクというジャンルがすっかり確立されたので、一理あると思います。一方で高価でメンテナンス性が悪いフルサスタイプは初めての一台にはオススメしていません。ここはどこを走るのかによっても適正が変わるので悩ましいですが

hitsuji

SJ EVOでも良いと思います。でもやっぱENDUROの方がより安心感があるのかなと思いました。実は両方とも乗ったことがないので、案件ほしいですね。

Teisuke Morimoto

スペシャはSJ EVOではなくENDUROの方がおすすめなんですね。そのわけを知りたいです。

tomoyancle

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