DJI AVINOXの衝撃

DJI AVINOXの衝撃


2024年 07月 05日

僕も道路交通法はうっすらしか理解していないのですが、おおまかには電動アシスト自転車のアシスト比は最大1:2(人力:モーター)で、例えば人間が200Wで踏むと400Wで駆動されます。

24km/hに近づくほどアシストが弱まり、それを超えるとアシストが切れるというのが道路交通法施行規則で定められた仕様です。国家公安委員会が「型式認定」といういわば道交法に適合したというお墨付きを与えているのですが、これを請け負っているのが日本交通管理技術協会です。ここで試験を受けて晴れて型式認定を取得できるのですが、結構なコストとかなりの書類、時間が必要だそうです。確かサイズごとに認定が必要とかで、これらのコストがあるためスポーツタイプのeBikeを国内に正規輸入するのはかなり難しいと聞きます。

またよく分からないことに、型式認定は任意なのです。なので、もはや形骸化している側面があり、スペシャライズド社のeMTBは公道が走れるモデルとして型式認定を取得していません。本社でテストして、道交法に適合したものなので、弊社は型式認定取得の必要性を感じていませんということでしょう。

今後はバイクパークやゲレンデなどのクローズドなフィールド専用の公道使用不可モデルとして輸入されるケースが増えると思います。海外で発売されている、日本の公道では走れないモデルはすごいのです。それくらい国内のeMTB市場は超ガラパゴス化しています。

こちらはつい最近新しいファームウェアが公開されて話題のシマノEP801です。同社のハイエンドモデルだけあって、かなりのビッグニュースなのですが、国内で話題にしている人は皆無だし、もちろんメディアも取り上げません。当然と言えば当然ですが、このEP801は道交法に適合しないモデルなのです。

今回、新しいファームウェアにより、このシマノのeMTB用モーターに「オーバーラン」という機能が追加されます。これはボッシュの呼び名が一般的になったもので、シマノはExtended Assist、つまり拡張アシストと呼んでいます。道交法に準拠したモーターの最大の欠点はペダリングを止めた瞬間にアシストが切れることです。実はこれが結構悲惨なことになりがちで、上の動画でも言ってますが、木の根っこなどの急斜面を登っていると、例えば地面とのクリアランスの問題でペダリングできない場合があります。脚を止めた瞬間にほぼ駆動がゼロになると、どうなるでしょう?ほぼ間違いなくバイクから落下して最悪は怪我することになります。

なので、ボッシュは早くからExtended Boostというオーバーラン機能を提供しており、ペダリングを止めても1mまでアシストを残してくれたのです。今回やっとシマノがこの機能を最大2mまで追加したことで、UCI E-ENDUROシリーズでようやく勝てるようなったそうです。

少しに前に日本ではeBikeのウォークアシスト、つまり押し歩きをしている時にアシストされる機能が解禁され、地味に話題になっていましたが、国内ではせいぜいそんな状況なので、EP801搭載のバイクが国内で販売されることはないでしょうし、例えば頑張ってユーザーレベルで並行輸入したとて、シマノから正規のサポートを受けることができないので、バイクを維持するのが難しいと思います。

その辺の街中では違法モビリティがブンブン走ってるし、LUUPが良くわからない謎のロビーパワーであれあれよという間に普及しましたが、一番存在感を示さないといけない自転車業界は昼寝でもしていたのかという感じで、世界の潮流から完全に乗り遅れてしまいました。あまりにeBike界隈の技術革新が速すぎて、道路交通法が現実に即していないのが現状です。

あんな車輪が小さくて不安定な電動スクーターにナンバーを付けて公道を走らせるよりも、道路交通法をちょっと改定してアシスト速度を上げるなり、アシスト比を上げる方がよっぽど良いはずなのに、現実は違法モペットが跋扈している訳で、こんな状況では健全なモビリティのマーケットは醸成されないでしょう。

今週、世界最大のバイクショーであるユーロバイクがフランクフルトで開幕しましたが、ほぼeBikeのショーになっているようです。そこで、あのトランスミッションで有名なZFがeBike用モーターを発表するなど話題になっています。しかし、盟主ボッシュが新しいCXモーターを発表しなかった上、ドローンで有名なDJIが革新的なモーターAVINOXを発表したことですべてを吹き飛ばしてしまいました。TQやFauzaなど軽量なモーターを得意とするメーカーの先行きは大丈夫なのかとさえ思います。

詳しくは上の動画を見て欲しいのですが、まずトルクがエグい。eMTBのモーターで通常105Nm/ブーストモード120Nmは前代未聞です。参考までにシマノのEP801が85Nmです。そして、最大パワーが1,000Wというのも聞いたことがないです。そもそものヤバい話が、DJIはわざわざこのモーターを売るためにAMFLOWというバイクブランドを立ち上げて、実際に販売します。まぁこのバイクが時代遅れなスタンプジャンパーという感じで、さすがにバイクのデザインまでは最先端ではなかったです。

それでも、19.2kgの重量で600Whのバッテリーは驚異的なパワーウェイトレシオで、通常であれば23kg前後になります。トップチューブに埋め込まれたディスプレイはタッチ式でヌルヌルと動くし、雨など水滴でも誤作動を起こしていません。Garminは今でもこれを克服できていないと思うのですが、DJIのモーター搭載のバイクならもうGarminのサイコンさえ不要になります。

DJIの人が説明していますが、ドローンにはブラシレスモーター、バッテリー、センサーなどがあり、それらを統合するソフトウェアがあったといいます。また、バッテリーに関しても高い技術を持っており、800Whのバッテリーとは思えないほどコンパクトにダウンチューブに収めたバッテリー、1.5時間で75%まで充電できるシステム、バッテリーを保護するために自動的に放電する機能などバッテリー周りも見どころが多すぎます。今後は同社のドローンやアクションカムとの連携も可能ということなので、期待に満ちています。

僕が本当に驚いたのは、動画の15分28秒くらいからなのですが、クランクを逆回転させてもラチェット音がしないこと。そして、正回転させるとゼロバックラッシュハブのように遊びがなく、ただちにチェーンを駆動することです。もう降参です。自転車オタでも文句を付ける所がありません。そしてこのバイクは日本では発売未定です。

ユーロバイクは少し前からeBikeだらけなんて言われていて、もう欧州では自転車=eBikeなのでは?という節さえあります。今やボッシュ、ZF、ブローゼ、Fazua(ポルシェ)にDJIという世界的な大企業が参入してきて、シマノやSRAMのような伝統的な自転車部品会社は大変だと思います。特にSRAMはeBikeの世界では大きく遅れていて、同社のモーターはブローゼです。スペシャライズドもブローゼと提携しています。なんとなく自転車業界がとんでもない弱肉強食の連鎖に放り込まれて、ジリ貧状態になっているような気がするのは、気のせいだと思いたいです。そう考えると自社でモーターを開発してボッシュみたいな巨人に立ち向かっているシマノさんはすごいのではないかと改めて思いました。

DJIさん、ぜひテストバイクを輸入して、僕にインプレッションさせてください。

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